本編結論からいうと、1999年8月前半を中心に起こる天体の面白い動きを地道な計算により知ったノストラダムスが、その一連の星の動きを詩に詠んだのだ、というのが私の解釈です。
もちろんこの解釈も推測です。ただこう考えてみると自然じゃないか、あるいは妥当じゃないかと推理してみたわけで、それも違うなと思うか納得するかはおまかせします。
ノストラダムスの詩の解釈という行為は、科学ではなく文学だということを忘れてはいけません。まあ科学にしろ文学にしろ、「解釈を確定するに足る証拠がなければ推論でしかありえない」のは同じですが。違うのは、ひとつの答えに確定することを目的としなくていいということ。ひとつの解釈に絞り込もうとするのは解釈する側の思い入れで勝手にやればいい、やらなくてもいい、ということです。
まず言葉づかいの注意点をひとつ説明しておくべきかもしれません。それはノストラダムスに絡めたときの「グランドクロス」という言い方です。確かに今年の7月〜9月に起こるのは、まぎれもなくグランドクロスです。しかしそれがグランドクロスであることは、ノストラダムスの時代にはわからなかったはずです。なぜなら、当時は土星までしか惑星が知られていなかったのですから。
現代の人間がグランドクロスと呼ぶのはかまいませんが、直接に「ノストラダムスがグランドクロスをどうのこうの」というときは、厳密にいうとそれは「Tスクエア(および一時的グランドクロス)」というべきでしょう。占星術でも天文学でも、地球から見て太陽と月と太陽系惑星がそれぞれどの方向に位置しているのか、黄道十二宮で区切って表します。
黄道というのは太陽の見かけの1年間の通り道です。地球の赤道の線をそのまま宇宙空間まで広げていって、23.4度ずらすとできあがる、帯のようなものだと考えるといくらかわかりやすいかもしれません。ちょっと乱暴な言い方ですが。
その道筋にある十二の星座をだいたいの目安として、ぐるり360度を12に分けて位置表示に用いたのが黄道十二宮です。あいだに蛇つかい座が見つかろうがレッドスネーク座が見つかろうが知ったこっちゃありません。単なる位置の目安ですから。大昔から、便利だし計算しやすいから12に分けましょうという話です。12っていろいろわり算とかしやすいでしょ。13って不便でしょ。どうせ細分するなら13星座じゃなくて24星座とか36星座に分けてほしいもんです。脱線してすみません。
「グランドクロス」というのは、そのぐるり360度を見渡したときに、ちょうど90度ずつの四方、地上の地図でいえばきれいな東西南北のように、十字方向にそれぞれなにかしらの惑星が位置することをいいます。例えば今年なら、牡牛座と獅子座と蠍座と水瓶座の真ん中へんにそれぞれ星が入るわけです。この4つの星座(正しくは「星座」じゃなくて4つの「宮」)は、それぞれ90度ずつ十字形をなしているのです。
そのグランドクロスに、今年の8/18にはさらに、冥王星を除くすべての惑星(太陽・月ふくむ)が参加するという珍しい現象が起こるというわけです。だもんで、だいぶ前から、ノストラダムスの予言はこのグランドクロスの時に何かが起こるという意味だ、という説がけっこういわれ始めました。
これが事実かはともかく、この言い方は間違ってません。グランドクロスは実際に起こりますから、そこにノストラダムスの予言の「時期」を当てはめてみたわけでしょう。つまり7月ではなくどちらかというと8月のグランドクロスの時期に何かが起こると。まあ何か大変なことが起こるかどうかは別として、天体ではわりと面白い動きが起こります。ノストラダムスはその動きを、誤差はあったと思いますが大まかに知って、詩に書いたというのが私の説ですが、そのときは実はストレートに「グランドクロス」という言い方をすることができません。
先に書いたように、ノストラダムスの時代には天王星・海王星・冥王星は発見されていません。で、今回の「グランドクロス」の場合、「クロス=十字」の一端(一方向)を担っているのが海王星と天王星のコンビなのです。そこには土星より内側の惑星はありません。
ですから、ノストラダムスの時代にいかに正確な計算をしようとも、あるいはのちのチコ・ブラーエが計算してもケプラーが計算しても、1999年にとりあえずグランドクロスは起こりますが、すべての星が参加するグランドクロスではありません。すべての星(冥王星以外)が参加して起こるのは「グランドクロス」ではなく「Tスクエア」なのです、ノストラダムスにとっては。
まあノストラダムスが超能力で海王星とかまでこっそり発見していれば別ですが。ちなみに惑星の正確な「運動」が解明されたのはケプラー以降です。が、それ以前の占星術師が残したホロスコープ(星の配置図)も、大まかにはだいたい合ってたりします。念入りに観測して計算すればけっこうイケたのかもしれません。
実際、チコ・ブラーエとその助手たちは、現代のNASA算出の惑星位置とほぼ違わない観測結果を残しており、誤差も驚くくらい小さなものですが、彼らはその正確な観測を肉眼で行っています。望遠鏡が発明されたのは早く見積もってもチコ・ブラーエの亡くなった年の出来事ですから。そのかわり彼らは何メートルもある大きな四分儀で(でも肉眼で)観測していたようです。人間てやればできるんだなと思います。脱線してすみません。
さて。「グランドクロス」ではなく「Tスクエア」だったらそれほど珍しくないのではないか、と占星術に詳しい人は突っ込んでくるでしょう。
「Tスクエア」というのはフュージョンバンドではないのかという情けないボケを期待している人も多数おられるかと思いますが、私にはそんな困ったボケはできませんのですみません。
とにかく「Tスクエア」というのは十字型ではなくT字型に星が列ぶわけです。グランドクロスよりは頻度も高くなります。
実際、今年の7月や9月のグランドクロスだってそうですが、ただいくつかの星が十字やT字に列ぶのはそんなに希少なことではありません。しかし1999年8/18には冥王星を除くすべての星がグランドクロスに参加するのです。これはとても珍しく、ノストラダムスの時代にはさらにその冥王星が発見されていませんから、そのせいで十字がT字に格下げになるとはいっても、空の文字通り「すべての星」が運命の座相=Tスクエアを構成する様子は特筆に値するでしょう。また、この8/18に向けてその少し前から起こるイベントがドラマを盛り上げてくれているのです。
本来ならノストラダムスがどうやってそこまで計算したかをここで前もって書くべきなのですが、いい加減本題を知りたいでしょうからそれは後回しにします。とりあえず、ノストラダムスが以下の天体ショーを知り得たという前提で読んでみて下さい。
では本題に入ります。まず空で起こることを説明しておきましょう。
占星術を担う天体の運動のうち、一番動きの速いのはいわずと知れた「月」です。これは約2〜3日でひとつの星座を通過していきます。この「月」が、スクエアの星の集まっている各宮へ入っていくと、占星術的にもグランドクロスやらTスクエアやらの重みが増します。
そして月の動きにはもうひとつ重要なイベントが付随します。それは月食と日食です。
その月食が実際、7月の終わりに起きましたね。部分ですが。月食の計算は月の軌道が正しくわかっていないと正確にはできないので、これは何百年も前から予想するのは難しかったかも。でも中国の古い話には皆既日食の日時を予測して戦争に利用したなんてドラマがありますよね。どの程度の知識でどの程度まで正しく予測できるのかはちょっと知りませんが、昔の人をあまりナメてはいけないのかもしれません。勘も含めて。
西暦1世紀のころに肉眼で見えないはずの「土星の輪」を知っていた人たちがいたという謎の記録も読みました。当時望遠鏡は発明されていないことになってますが、すでにレンズだけはあったそうですから、もしかして……。あるいは視力が50くらいある人がいたとか。まあとにかく、この7月の終わりの月食のときは、奇しくも月のおかげで、海王星・天王星コンビがなしでもグランドクロスができていました。
これがドラマの始まりといっていいでしょう。ちなみにこの7月のグランドクロスのときは、金星が乙女座にはみ出ているので「すべての星」の参加とはいえません。
その後、月は魚座・牡羊座を経て、8/4に牡牛座の宮へ入ってきます。
このときはさらに、水星が蟹座へはみ出てしまって、ふたつの星がTスクエアから脱落してしまいます。なんだか「あらら」という感じです。ところが、このときすでにドラマは新展開を見せています。7月に獅子座を通り越してしまってTスクエアから脱落してしまった金星が、なんと「逆行」を始めるのです。
「逆行」について説明します。普通は黄道十二宮のホロスコープ上で、星たちはみな反時計回りに回っています。このホロスコープ上での反時計回りの運動は、あくまでも地球から見てのことなので、地球だって一緒に回っていますから、時には見かけ上、地球から見て逆方向、つまり時計回り方向へ動いているように見える星も出てきます。この、いつもの反時計回りの運動に対して、反対方向へしばらく動くという現象を「逆行」と呼びます。この逆行がこのタイミングで金星に起こるのはナイスなドラマです。金星が獅子座にいた頃には太陽はまだ蟹座にいました。太陽がようやく獅子座に入ってきたときには、金星は待ちきれずに乙女座へ逃げてしまいます。アポロンが遅刻してビーナスにフラれた構図です。え?ナイスじゃなくて格好悪いって?
まあとにかく、この金星の辛抱のなさのせいで「すべての星」が参加する「7月のグランドクロス」のチャンスはオジャンになります。遅刻した太陽神は失脚ものです。
それが、しばらくするとフケたはずの金星が太陽のもとへ戻って来はじめるのです。「私が悪かったわ」と反省したのでしょうか。いえ、それはちょっと違うと思いますが。そして月は8/11に獅子座に入り、太陽と会合します。このとき日食が起こりましたね。この時点ではまだ水星は蟹座へはみ出したままですが、翌日8/12には獅子座に入ります。金星はまだ必死に太陽目指して走っているところです。
やがてクライマックスが訪れます。
T字型(十字型)の一翼をひとりで担っていた火星のもとへ月がやってきます。この直前、金星はようやく獅子座の位置に返り咲き、翌日8/17に月が蠍座に入ります。そして8/18、月と火星が十分に接近して、冥王星を除くグランドクロス、あるいは土星以内のすべての星が参加したTスクエア、が「すったもんだの末に」完成するのです。
さあ、この天体ショーが、ノストラダムスにはどう見えたのでしょうか。まず問題の詩を見てみましょう。
L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois,
Du ciel viendra vn grand Roy d'effrayeur.
Resusciter le grand Roy d'Angolmois,
Auant apres Mars regner par bon heur.1行目は「1999年7の月」ってやつです。「7の月」っていいますが、そんな言い方おかしいですね。原文も確かに変です。どちらかというと「7月(しちがつ)」というより「7月(ななつき)」「7ヶ月」みたいなニュアンスでしょう。英語に直すと「seven month」ですからね。まあ3行目のAngolmoisと韻を踏むために変更したとも考えられますが、果たしてどうなんでしょうか。どちらにしろ、暦の違いで当時の7月も現代の8月に重なりますし、そもそも当時の計算には誤差がつきものですし、ノストラダムスも自分の計算の誤差などをを考慮して、「だいたい7ヶ月すぎたころじゃないかな」って意味で「Juillet =7月(しちがつ)」という単語を避けたとも考えられます。
で、2行目、「畏るべき大王が空から来るだろう」という意味です。いろいろな人が指摘してますが、「恐怖の大王」というのは悪ノリか誤訳です。確かにそりゃ「effrayeur」を現代の辞書で引くと「恐怖」ってのも載ってますけどね。もっと一般に「恐怖」を表す単語はほかにたくさんあります。「effrayeur」は現代フランス語でもどっちかというと「へへ〜っ、大王さま〜」ってなくらいの「畏れ多い感じ」じゃないでしょうか。まあほんとに、フランス語かじってる人の間では今さらここでいうほどでもないことです。
じゃあ、この大王って誰よ、って話はいろいろ解釈があって良いでしょうが、結局は天体の星の列びからのインスピレーションか、ミレニアム(1000年期)の最後だから何かあるという霊感、あたりを考えるのが妥当でしょう。
私の解釈では7月末の「月=moon」のおかげのグランドクロス(金星が脱落したやつ)による「十字」のインスピレーションとTスクエアの真ん中に位置する太陽の象徴と、最終的にすべての星を従えてTスクエアが完成するという珍しい現象、これらから「偉大なる王の統治」をイメージしたのが詩の始まりではないかと思います。
「空から来る」というのは、天空のその希有なるサインが地上にも偉大な王の誕生を告げているのだと、もしかして宗教的啓示のようなインスピレーションを持ったのかも知れません。そして3行目、「アンゴルモワの大王を甦らせる」。
この「アンゴルモワ」はこのままだと何のことだかわからないために、文字を入れ替えたりなんやらいろいろな人たちが試行錯誤されたようですが、まああんまりこれという会心のアナグラムはできなかったようですね。よくいわれる「モンゴリア」は、できあがったモンゴリアのスペルも実在しないため、ちょっと鮮やかではありません。「アンゴルモワ」がどうせ架空の名詞なんだったら、並べ替えた元ネタは正確なスペルでなくてはおかしいことになります。並べ替えて元ネタが見つからないのなら、「アンゴルモワ」のほうが本物だということになりますね。
まあ私自身は趣味としてはアナグラム大好きなんですが、私はこの場合においてはアナグラム説はとりません。
いずれにしても、もし文字を入れ替えるのだとしたら、『「7の月」が「7月」でないのは「アンゴルモワと韻を踏むため」だ』とする説は捨てなければいけませんね。アナグラム説とアンゴルモワに合わせて「7の月」にしたという説とは両立しません。「アンゴルモワ」はそのまま地名であるとする説をネット上で読みました。その説はけっこううなずけます。かいつまんでいうと、この名の古い発音と一致する地名がフランスに実在し、そこは名君主の出た有名な土地でもあるので、「偉大な名君主」の象徴として代表的な地名をひとつ挙げたのだろうというのです。
かなりナルホドです。というわけで、アンゴルモワは偉大なる王を象徴するための地名などから来た単語で、たまたま「sept mois」と韻を踏むものが選ばれたのだと考えるといいのではないでしょうか。
私はもともと「Juillet(=7月)」だとTスクエアの天体イベントの時期をちゃんとカバーできない可能性があるので「sept mois(ななつき・7ヶ月)」と幅をもたせたのだろうと最初からいってますから、この「sept mois」のほうに必然性があり、こっちと韻を踏むために「Angolmois」が選ばれたのだと考えます。でもって、大事なのは「甦らせる」のほうです。
これこそ先ほど述べた天体ショーのクライマックスです。一度7月末にグランドクロスが出来ておきながら、月が水瓶座を出てしまうのでTスクエアになる。これが大王の潜伏のイメージを喚起します。
そしてその3週間後、こんどは「すべての星を従えたTスクエアが、太陽を中心に復活する」わけですから、これがまさに「甦らせる」のドラマなのではないでしょうか。カトリックとしてキリストの再来を想像したのかもしれませんし、あるいはメシアの誕生を想像したのかもしれませんし、宗教と関係なく偉大なる英雄の姿を見たのかもしれません。
いずれにしても、この7月末から8/18にかけての天体の運動が、「不完全な十字架が一度壊れ、のちに再びもっと完全な状態で英雄の相が復活する」という、「神話世界の常道=復活のドラマ」に合致することは確かです。
ちなみに、諸説ありますが、一説では占星術でTスクエアといえば、英雄のもつ運命的座相だともいわれます。よくスクエア=90度は不吉だとかいわれますが、運命に逆らえないという「堅さ」はあるものの、その運命によって頂点に君臨する人だっているわけです。
このTスクエアが、「すべての星」の参加によって形作られるのですから、「よっぽどの偉大なる英雄=王が現れるだろう」とノストラダムスが詩に詠んでも(あるいは預言しても)、自然なことだと思います。となると最後の行、「前後、火星が幸運のうちに統治する」については、ちょうどその「完全なる復活」のとき、月が火星のところへ訪れることを表していると考えられます。
本来なら火星単独でTスクエアの一翼を担うのは荷が重かったはずです。T字のもう一方の側には木星と土星がいるのですから。それに一説では、火星は単独だと凶星になることも少なくありません。しかしそこに、月がやってきてくれる。火星と月の相性は必ずしもベストカップルではありませんが、ひとりで苦戦していた軍神=マルスのもとを訪れるダイアナ(アルテミス)は、この英雄復活の一大事においては幸運の女神として輝くことでしょう。
8/18の「全員参加型Tスクエア完成」の前後は確かに火星の前後に月がいることになります。この月の来訪により、火星は反対側の木星・土星コンビともなんとか「釣り合いがとれ」、太陽の復活に際して理想的なパワーバランスをとることができる。まさに王の戴冠式の日に現場の統治を受け持つ将軍のように、火星は(ラッキーな月の来訪のおかげで)活躍することができるわけです。こうして、ノストラダムスの問題の4行詩が、7月末〜8/18(前後)の天体の動きをドラマチックに表現したものではないかと私は解釈したわけです。どうでしょう。まあどうでもいいんですけどね(本音は「これしかないでしょぉ!」と思ってるんですが)。
最後に、ノストラダムスの時代に1999年の惑星の運行を計算できたのか、という疑問に対して、一応の可能性を示しておきましょう。
まず、グランドクロスなどの珍しい天体イベントがいつ起こるかを調べるために、例えば1週間ごとの天体図をひたすら1999年まで作っていったり、なんてことはいくら仮にノストラダムスが暇人だったとしても無茶でしょう。実際はお仕事あったでしょうし。
この点についてはひとつの予想がつきます。それは木星と土星のコンジャンクションをたどっていった可能性です。
コンジャンクションとは、日本語では「合」ともいい、惑星が同じ方角に重なることをいいます。よく「金星と土星が接近するのでうんぬん」なんてニュースでやってますし、日食なんてのも太陽と月のコンジャンクションのうちで、さらに高さまで重なるために起こる現象です。
そして、ノストラダムスの昔から、木星と土星のコンジャンクションの時には歴史的に重要な出来事が起こるといわれていました。木星は地球から見て約12年で一周し、土星は30年周期です。つまりこのふたつの星のコンジャンクションはおおよそ20年くらいの周期で訪れます。「最小公倍数は60年じゃないの?」と思うと間違いです。60年というのはふたつの星が「再び同じ場所(宮)で」コンジャンクションを起こす周期です(実際にはちょっとずれますが)。60年を待たずとも、木星が1周してきて、その間に土星がのろのろ進んだ分をさらに追いつけばいいのですから、だいたい12年+8年くらいで再びコンジャンクションが起こります。
ということで、「何か大きなことが起こる時期」を探すときは、とりあえずこの木星と土星のコンジャンクションを追っていけばいいので、20年ごとにホロスコープを作ってみることになります。
これなら、1世紀あたり5つくらいの時期に照準を合わせ、その付近の星の列びを検討していけば、わりと早く1999年のグランドクロスにたどり着けます。奇しくも今年のグランドクロスの頃には、ちょうど木星がもう少しで土星に追いつくというところまで迫っているのです(木星が土星を追い抜くのは来年)。
つまり、ノストラダムスが木星と土星のコンジャンクションを追いかけて約20年ごとに星の運行を調べてきたとすれば、1999年のグランドクロス(フルTスクエア)はけっこういい確率で短期間で見つけられる可能性もあるわけです。あとは、かなりへんてこな動きをする金星や水星の動きをちゃんと計算できたのか、ということですが、これももうノストラダムスより何百年も前から、まあ正確とは言い難いにしてもある程度知られていました。天動説が採用されたことでヨーロッパではややこしいことにもなりましたが、紀元前の古代ギリシャからある地動説が復活してクリアになっていく前にも、運行の軌跡だけは観察によってすでに知られており、「なぜこんな動きをするんだろう」と後から考えるという状況でした。
計算式で出すというより、完全に一周する周期で年月を進めていって、あとは一周の間に逆行するのがいつ頃かというのを当てはめてなんとかかんとか出したりということもできます。たぶんいきなり金星だけで計算してもかなりの誤差が出ると思いますが、ほかの星の位置が先に出そろっていれば、過去の観測値と照らし合わせることで、もしかしてほとんど計算なしでもある程度位置と動きが出せたかもしれません。月の運行はもう、正確に一定周期ですから、小数点第何位〜まで厳しく計算すれば小学生でも何百年何千年先まで知ることが出来ます。月があればですが。
星の観測技術に関してはチコ・ブラーエの話で前述したとおりです。1610年(〜12年頃)の望遠鏡の発明とは関係なく、それ以前(1609年以前)にすでに、現代に肉薄する正確な観測が人間の肉眼によってなされていたのです。望遠鏡なんて最初は天文学にはなーんも役に立たなかった、なんていうつもりはありませんが。星のイボイボとか衛星とか発見できましたしね。占星術には意味ありませんでしたが天文学には貢献したでしょう。
まあとにかく、確かにチコ・ブラーエの観測装置は突出して大がかりなもので何人もの人間が携わっていましたが、結局その正確な観測の最大の成功条件はといえば「根性と体力」だったと思います。逆にいえば、根性と体力があれば、あとはできるだけ長いまっすぐな棒とそれを小刻みに固定する技術でかなりなんとかなったのではないかとも思います。まあその体力が実際は一番大変でしょうから「じゃあお前やってみろ」といわれてもイヤですが。それに今だと肉眼ではほとんど地平線付近の惑星なんて見えないし。
以上、なんだかとても長くなってしまったようですが……うへ、本編だけで9500字超。読み込み時間かかりました?