ここで本当に展開したい本編は、
ノストラダムスの「1999年〜」の詩が7月末から8/18にかけての天体ショー(空を見てもあまりわからないけど)についての言及であるという解釈の説明で、「恐怖の大王」やらなんやらが何のことなのかということも含めて、話しておこうということです。

ただ一応、本編に入るその前に、念のため私のノストラダムス観をまとめておいたほうがスタンスがはっきりするかなとも考えて書いておいたのですが、どうもかえって誤解を受けそうでもあります。せっかくなので載せておきますが、とにかくこっちの「序」のほうは酒飲み話のようなもんだと思って軽く読み流して下さい。

というか、どうでもいいと思ったら読み飛ばして下さい。いえたぶん、ノストラダムスにある程度こだわってる人以外にはけっこうどうでもいいことだと思います。なんならここをクリックすれば本編に飛べます。→本編
前置きが気に入らないせいで本編読む気をなくされるよりは、今すぐ飛んで先に本編を読んでもらったほうが私も望ましいので。ぜひ先に本編へ飛んでほしい気分。

というわけで暇な人向けにちょっとした前置きです。前置きといいながら出来るだけ本編の後で読むことをオススメします。

ノストラダムス、彼はフランス語を話し、ラテン語がわかり、少なくとも占星術と医術の知識はあり、そのほかにも知りたいことがあったらパトロンに頼むなどして必要な文献を手に入れる手段は人よりもかなりあった、そして貴族や王様おかかえということで、教会内の学者に比べれば思想統制みたいなこともある程度ゆるくて、要するに知的環境に恵まれた、「遅れてきたダビンチ」のようなお人だったと思ってます。

そしてあの予言集といわれた詩集『サンティエリ』。
みんなが気にするのはこれが予言書なのかどうかということのようですが、はて、それではこれが「とりあえず予言書」だったらどうだというのでしょうか。というのは、仮に「ワシは超能力者じゃ。これは未来に実際に起こることじゃ」とノストラダムスが本の表紙に書いていたとして、それだけでその本をあなたたちは何としてでも手に入れ、「明日、日本は完全に沈む」と読みとれる文があったら、着の身着のまま今日のうちに国外に脱出するでしょうか。
しませんよね、普通は。その本が「真に予言書」であるかどうか、つまり書かれていることが本当に起こるのかが、重要なわけです、そういう人たちには。ノストラダムスがどういうつもりで書いたかなんてのは、その人物や著作の研究者でない限り、実はほとんどどうでもいいことなのです。
だいいち「ワシは超能力者じゃ。これは未来に実際に起こることじゃ」といって本を書く凡人はいくらでもいますから。本人がどういうつもりかなんてことは知ったこっちゃないのです。逆に予言だなどと書かれていないもののほうが未来をズバリ言い当ててたりもしますしね。

じゃあ話を進めて、あの詩集は結果的にしろなんにしろ「信じるに足る予言集」なのか。
結論から先にいうと、あくまで「予言書」としてだったら、『万葉集』とか『百人一首』とか『フィリップ・K・ディック SF短編集』と同じくらいの「解釈を楽しみ試しに信じてみるに足る面白さ」というのが正当な評価だと思います。

いえ、訂正しましょう。「よくできたSF小説」はノストラダムスの詩集よりも「予言書」としてははるかに上です。

なぜノストラダムスの『サンティエリ』が「予言書」としてその程度かといえば、「その未来がいつ訪れるのか」誰にもわからなすぎ、だからです。みんな「1999年7の月」でビックリしてて、「ほかに何十という詩の内容が現実に起こっている」などと「どれくらい勉強したかわからない人たち」にいわれて震え上がっているのでしょうが、ほかの詩には「〜の月」はおろか、「だいたいの年代」ですら書かれてないんですよ。そして当たった当たったとこじつけて騒いでるけど詩の順番もバラバラ。これじゃ、解釈する楽しみはあっても、予言書としては役立たず。起こってしまうまでどの詩が未来のことでどの詩がすでに過去なのか、そしていつ起こる未来のことなのかちっともわかりません。私が頭悪くてわからないのは仕方ないとして、世界中で誰もちゃんと正確にわからなかった以上、やっぱり「役立たず」だったのは事実でしょう。

「本当のことを本当の時期とともに書いたら未来が変わってしまうから伏せているのだ」という人がいますけど、そんなヤワっちい未来だったらそもそも予言なんてして意味あるの?
「あなたの出現と悲惨な末路を予知した人がいます」っていわれたくらいでヒトラーが立候補辞めたと思う?
そんなの傲慢はなはだしいです。「凡人いずくんぞ変人の頑固さを知らん」です。
妄想がたくましい人に限って現実の想像力がなさすぎなのは仕方ないのかもしれませんが。

現に「1999年〜」で20年近く前からこんな恥ずかしいくらい大騒ぎしてるくせに、その人たちだってシェルターひとつ買ってないでしょう。フツーの人たちというのは、確かにちょっとした煽動にも簡単にのせられて大変なことをやらかしますが、一方で、面倒くさいことやコストのかかることはよっぽどじゃないとやってくれないものです。そのよっぽどというのは、時に政府発表ですら信じてもらえなかったりするのですから、何百年前のオジサンが言ったことで人々が動いて未来が変わるとしたら、まず少なくとも、いつ何が起こるかが明記されていて、しかも100発100中くらいの「ものすごさ」がないと。

というか、もしもあなたが、未来の正確に見える超能力者だったとして、自分の死後何百年も先の未来を書き留めるときに、「未来が変わることを恐れて年代すら書き込まない」なんてことありますか。そもそも、変わるんだったら変わったっていいじゃないんですか。なんかマズイですか?
勝手にノストラダムスの身になったフリして、「年代を書いてしまったらマズイから伏せていた」なんて間抜けなフォローされてもノストラダムスが迷惑するだけです。

本当に未来に起こるはずのことだったら堂々と書きましょうよ。そして自分が生きている間に予言が的中して危険視されて処罰されたりするのが怖かったら、厳重に封印するとか、あるいは自分が死んだあとのことから年代を書いておけば、生きてるうちには予言は当たらないのだから危険視もされないでしょう。

以前発見された、とある遺跡では、「(階)段の高さ」がなぜか不規則でした。で、その高さの比率の差を試しに時間に置き換えてみると、段が変わるところ、つまりその段々の場所にあたるそれぞれの年代に、国が興ったり滅びたり、重大な節目がピッタリ一致して起こっていることがわかったそうです。これが本当なら、「こっちのほうがっ、スゲェ〜」ですね。その先の階段を見ればしっかり未来予知できますから「予言」として有用です。しかも一見するといつだなんて書いてないようで、ちゃんとすぐにわかるようにしてある。

ノストラダムスの詩も、暗号で年代が隠されているという説もあります。しかしそれを読み解いてたとえば90年代の未来をズバズバ言い当てたような人は、これだけ研究者がいながらどうやらひとりもいないのでは。
本当は、「わかんなきゃしょうがない」という言い方は、もしかしてわかる人にはわかってるのかもしれないから、あまりしたくないんですが、秘密結社や秘密宗教の人ではなくてむしろ科学者に近い自由な創作者の立場の人が、そこまで未来を隠す必要がどこにあったのかということです。
そしてもうひとつ、もし本当に暗号で隠してるなら、どうしてあの「1999年〜」の詩は嬉しそうに「月」まで書いちゃったりしてるのか。それこそ世界滅亡みたいな大事な予言ならなおさら、この詩こそ年代を「隠す」べきでしょう、ほかの詩でわざわざ年代を隠してるんだとしたらね。
これこそ本編で述べる、星の妙に感動した詩だからということにほかならないと思うんですが。

と、ホントに、ノストラダムスを責めているのではありません。逆です。私は彼の詩のどちらかといえばファンです。
あえて彼の立場をここで言及するなら、卓越した科学知識と占星術のロマン、そしてちょっとぶっ飛んだビジョンとで、語尾が未来形となる詩をたくさん書き記した、詩人、と言っておきたい。

ただ「信じるに足る予言書」としては、あの詩集は「信じるに足るも何も、いつ起こるか書いてないとちゃんとした予言じゃないやんか」としかいえないということです。

「予言的暗号文学」とはいえます。だから『万葉集』や『百人一首』と似たような感じといったのです。『万葉集』の中から、その後の未来に起こったことを暗示するような記述を誰か抜き出してみて下さい。順番なんて気にしないで、符合する言葉を探し出してくればいいのです。アナグラムなんかもやってみたら、もしかしたらノストラダムスより勝率いいかもしれませんよ。
面白い詩をたくさん集めて、いわくありげな人物の名前を冠すれば、どんな詩集だって、何百年か後にそこそこの「予言書」に誰かが仕立て上げてくれるということもいえるわけで
す。

うわー、なんだかイヤな科学合理主義信奉者のような口振りに近くなってきてしまいましたね。やだやだ。私は一応、超能力や神秘現象の類は「可能性としてはアリ」だと思ってるほうですよ。占い師もやってますしね。
だからこそ、本物の予知能力者があのような詩の書き方をするだろうかと疑問に思うわけです。「あのような」というのはつまり、年代を示さない「不備な予言書」を書くのかと。

まだ私の疑問が伝わらない場合のために、ちょっと論理的に行ってみます。
もういいやという人は本編へ飛んで下さい。

はい、では。
本物の予知能力者が予言書を書こうとしたとき、彼が「後世の人類のためを思って書く」場合と、「特定の団体や血筋の利益だけのために書く」場合と、「浅薄な売名行為」の場合が考えられます。
最後の売名行為の場合なら、ノストラダムスの詩集についてはインパクトなさすぎです。読んでみればわかりますが、こんなんじゃあまりに中途半端で、それこそ1999年が間近に迫らない限り絶対名前も本も売れないでしょう。そして国王お抱えのノストラダムスには売名の必要もありませんから、三番目は除外します。

さて「後世の人類のためを思って書いた」としたら、結果としてこんな役に立たなかった予言書とはいかがなものでしょうか。
例えばノストラダムスにわずかに流れるユダヤの血を考えたら、とりあえず先に、ホロコーストを防ぐためにもっとわかりやすいメッセージを残すべきではないでしょうか。ヒトラーの台頭以降のドイツとヨーロッパを克明に予言して、理不尽な大量死を防ぐべきではなかったのか。あくまで例えばの話ですが。
ユダヤのこだわりは捨ててカトリックに徹したとしても、あるいはもっとグローバルな意識を持っていたとしても、ノストラダムスの死後これまで、さすがに人類が全部滅ぶことはなかったとはいえ、中世の人間からしたら目を覆いたくなるビジョンはいくらでもあったでしょう。そしてそんな感じのおぞましい表現の詩は確かに書かれています。でも年代がわからない。人類のためを思うなら、なんでそれらの大事な詩のとこだけでも、年代と場所がわかるようにしてくれなかったんですか、ということです。
あるいはもし何か別の方法で時期が算出できる暗号になっているとしたら、どうして「1999年〜」の詩はこれだけハッキリ書いちゃってるのでしょうか。
それにこの1999年になるまで、世界中で誰も解けてないところ見ると、よほど難しい暗号で時期が隠されているようですが、それじゃ人類ちっとも助からないじゃないですか。というより「予言書」がまったく役に立たないわけです……それは予言者のプライドとしてどうなんでしょうか。

となると怪しいのは「特定の団体や血筋の利益のために書いた」説です。
これなら、何かどこかに代々伝わっているような特定の書物や経典や図式などを用いないと年代がわからないようになっている、ということが考えられます。これまでもそうして特定の人たちだけがノストラダムスの予言を解読し、間違っても本なんか出版しちゃうような愚かなことはせず、裏で世界を我がもののように動かしてきた、というオトロシイこともあながちないとはいえません。
でも、それじゃ、「1999年〜」の詩はナニ?
この詩だけ隠さないってことは、実は大した詩じゃないとか、ダミーとか。
または、意図的にその時期に人々の関心を「空からくる何か」に向けさせて、実は「地下に」巨大都市を築いていたりとか。いずれにしても、人類滅亡なんて一大事を表してるなら、この詩こそ隠蔽、あるいは袋とじ(笑)にでもせねばならんでしょう。いや仮にノストラダムスが一片の善意で、組織の意図に反して人類のために、この詩だけ年代ツキで書いてくれたのだとしても、彼の死後に当の秘密団体が速攻で年代のとこ消しちゃうでしょう。

で、以上のことからこのようにいえます。
結局、仮にノストラダムスが本物の予言者だったとしても、「あの詩集」は本物の予言書ではないと考えるのが妥当でしょう。本物があったとしたら、たぶん誰か大事に隠してるんでしょう。
いえ、もしも、「あの詩集」が本物の予言書だったとしても、「1999年〜」の詩は人類滅亡なんてすごいことを表しているはずはないでしょうと。


頭のいい予言者で、自分の予言書が特定の人物や教会などによって隠蔽されたり焼却されたりするのを防ぎ、後世に伝えようと思うなら、ちょっとやそっとじゃ「予言書」と思えないような作りにするのがベストだと思います。
それこそ『万葉集』なんて、もしあれが予言書だとしても誰も気づかないもの。教会のチェックが厳しいご時世に書いたんだから、せめてこれくらい周到にカモフラージュしてもよかったのでは。カモフラージュにしては、未来形で予言ぽく書いてるし、ところどころ未来の年代を書いてるし、やっぱり中途半端なんですよ、予言書とすると。だから純粋に詩なんですって。

優れた結び目というのは、引っ張ってもほどけず、解く時はスルスルと解けるものです。そのように、優れた暗号書というのは、まず暗号であることに気づかれないようになっていて、暗号だとわかった人物にはスルスルと解読できるようにできているものでしょう。そうでないと役に立たないのです。
誰の役にも立たない本に情熱を費やせるほどイッちゃった人もいるでしょうが、ノストラダムスは晩年も理性の固まりのような人だったと信じたい。

だから、この詩集は、私は純粋に彼の知と感性の集大成のような詩集だと思います。ちょっと晩年のノストラダムスに電波が入って、どこかで「これは予言じゃ」と述べていたとしても、です。

さーて、そこでようやく本編です。

 →本編


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